日本酒の種類で「特別純米酒」というくくりがあります。
特別!と付くと、なんだか期待しちゃう響き。
でもこれ、「一番ノーマル」と思ったほうが日本酒の世界が掴みやすいと思います。
酒屋をやってた時から、この名称の説明には頭を悩ませたもんです。
特定名称酒うんぬん・・・という、よくある説明では意味ないかも?と思いまして、解説してみます。
目次
特別純米酒とは?
「特定名称酒という話は意味ない」とか言いながら、一応その話もします。
他のサイト上でも紹介されてますが、これは法律によって規定されてます。
あ、ここ、めんどくさいし、面白くもないので飛ばしても可です。(笑)
- 特別純米酒=60%以下の精米、または特別な造りの純米酒
原文読みたい人は、国税庁のHPに書かれてます。↓
つっても、どこやねん!って解りにくいので抜粋しておきます。↓
純米酒又は本醸造酒のうち、香味及び色沢が特に良好であり、かつ、その旨を使用原材料、製造方法その他の客観的事項をもって当該清酒の容器又は包装に説明表示するもの(精米歩合をもって説明表示する場合は、精米歩合が60%以下の場合に限る。)に「特別純米酒」又は「特別本醸造酒」の名称を用いること。
60%以下の精米とは?
特別純米酒と名乗れる条件の一つ「精米歩合60%以下」
これは原料である米をどこまで削るか?という話です。
僕らが食べるお米で「3分つき、5分つき」など聞いたことないでしょうか?
玄米は何も削らないので0%、3分つきで3%、5分つきで5%削っています。
普通の精米だと10%ぐらい削ってます。
ちょっとまぎらわしいですが、精米歩合の書き方は逆になります。
「精米歩合60%」の場合は40%削ったということです。
いっぱい削ると、どうなるの?って話ですが、米のタンパク質やミネラルは外側なので、そこを削れば純粋なデンプンになってくるというワケです。
または特別な造りの純米酒とは?
さきほどの定義で「60%以下の精米、または特別な造りの純米酒」とあります。
特別な造りってなんやねん!って話ですが、とにかく理由があればOK!
よくあるパターンは原料米にこだわった場合。
兵庫県産山田錦を使用とか。
この「特別な理由」ってのはラベルに書かないといけないらしい。
60%以下の精米じゃないのに「特別純米」と書かれた場合は、何かしらラベルに書かれてあります。
・・・ということは「毎日がスペシャル」(by竹内まりあ)とでも言うように「ワシの蔵の米は全て特別じゃー!」と気持ちの問題で押し切るのは無理です。
ただこの「特別な理由」で特別純米と名乗る酒は少ないはず。
なので通常は60%以下の精米歩合だと思って良いかと。
パーセンテージも厳密に覚える必要ないです。
「特別純米って普通の純米より、もうちょっと米を削ったんだな」と思えばいいです。
表記しないのも蔵の自由

最近、造りの名称を表記しない蔵も増えました。画像は新政酒造の「瑠璃」
法律で決まってることなので、一見ルールに見えますが、違うんです。
この「特別純米」という言葉は付けても付けなくてもいいんです。
あれです、その昔、車の免許にあった筆記試験にこういう問題ありませんでした?
青信号は進め、○か×か?
そう、答えは×。青は進めではなく、進んでも良い。
これと似たようなニュアンスで、60%精米してれば名乗ってもいいし、名乗らなくてもいいです。
・・・なんか解りずれぇー!と思ってる方、ごもっとも!(笑)
基本的には、蔵がどう名乗りたいか?によって決まります。
極端に言えば、精米50%で大吟醸を名乗る資格はあっても、純米酒とだけ書いてもいいです。
それすら書かずに、日本酒とだけ書いてもいいわけです。
逆はダメですけどね。米を50%削らずに「純米大吟醸」とかは名乗れません。
ここは解りにくいので、あとで純米吟醸との比較でもう一度書きます。
あれみたいなもんかな、体重50kgの人はフライ級に出れるし、やろうと思えばバンダム級にも出れるみたいな。
・・・よけい解りにくいか。忘れてください。
ちなみに、日本の場合、酒に関することは「国税庁」、税金に関する役所が決めてます。
だから、解りにくい部分なんてのがいっぱいあるんですよ。
ビール、発泡酒、第三のビールとかが良い例です。わけわからんっしょ。
酒以外の食品ならば、管轄が「消費者庁」なんで、まだ消費者目線なんっすけどね。
ドイツの「ビール純粋令」とか、フランスの「ワイン原産地呼称法」とかに比べると、日本酒に関する決まりごとがパッとしないのは、こんな背景もあるからです。
特別純米と純米吟醸の違い。
純米吟醸の定義は「60%以下の精米」なんで特別純米と同じ。
でも、どっちを名乗るかは自由です。
蔵の人は「特別純米」で売るか?「純米吟醸」で売るか?けっこう悩んでるんじゃないかなー!と思います。
一般的なイメージとして「吟醸」と付けるとフルーティーな香りだったり、高級な酒というイメージがあります。
そこを避けたい時に「特別純米」と付けたパターンが多いかなと思います。
純米酒と特別純米酒の違い
酒屋をやってたころに「純米酒と特別純米って何が違うの?」という質問はよくされました。
特別と言うからには、さぞや素晴らしい・・・と思いきや、実はそんな違いはないんです。(苦笑)
「いつもより米を磨いた純米酒、でも吟醸じゃないよ」、簡単に言えばこんな感じです。
ただ、だからといって特別純米のほうが旨いか?と言えば、それは全く関係ありません。
ふだんの生活で「特別」って付いたら、期待しちゃう気持ちはわかります!
- 「特別な日」=誕生日?クリスマス?
- 「特別な部屋をご用意しました」=アップグレード来たぁ!
- 「本日は特別メニューとなっております」=やべえよ、これ高えよ
という感じで、特別という言葉の響きは心地よいのですが、日本酒ではそれほど差はありません。
特別純米酒ってどんな味?この質問が一番困る
特別純米、ひとくくりにどんな味?と説明するのが一番難しいところです。
普通の純米酒より米を削ってます。
だから、味としてはスッキリなのか?と言えばそうでもない。
原料の米や酵母の種類によって味も変わるので、なんとも・・・
例えば、Aの蔵で特別純米を買って、Bの蔵で純米吟醸を買ったとします。
一般的なイメージだと、Bの純米吟醸のほうがフルーティーだろうと思われがちですが、ぜんっぜんアテになりません。
フルーティーな酒が多い蔵があれば、逆に香りを出さない蔵もあったり。
酒の個性って蔵によってバラバラなんです。
試しに、ここ数ヶ月で飲んだ特別純米を無理やりグラフにしてみますと・・・
有名な銘柄じゃないので、解りにくいかもしれませんが、こんな感じで特徴はバラバラです。
じゃあ、もはや特別純米なんてジャンルは要らないジャン!と思うかもしれません。
いや待って!実は便利な使い方があるんです。
使い方?捉え方と言ったほうがいいかな。
特別純米が一番ノーマルなワケ
ほとんどの蔵は現在、以下の4つの種類を造ってます。
- 純米酒
- 特別純米酒
- 純米吟醸
- 純米大吟醸
このとき、特別純米をその蔵の真ん中!として捉えると、比較しやすいです。
特別純米酒を真ん中だと考えて、それと比較して純米酒や純米吟醸はどうか?
一般的に考えると、以下のようになりそう。
純米酒→特別純米→純米吟醸、とフルーティーさが上がりそうですが、そうならない事が多いです。
フルーティー系が得意な蔵は、だいたいこうなります。
純米酒のほうが、特別よりフルーティーになると思います。
熟成系が得意な蔵は、真逆です。
吟醸→大吟醸と上がるほどに長く寝かすので熟成香が強くなるパターンが多いです。
・・・書いてる本人が言うのもなんですが、これ、読んで面白いのかな?(爆)
すげえマニアックな気がしてきた。
あえて削らない日本酒も増えてきた

http://sakuramuromachi.co.jp/product/精白純米酒-雄町/
上の酒は「80%精白純米酒-雄町」という酒。
業界的には削って削ってキレイな味、というのがトレンドなんですが、やっぱり逆をつく奴らもいるわけで(笑)
あんまり米を削らない純米酒ってのも増えてます。
この手の酒は、濃密な味わいで個性的な物が多いです。
また、純米酒には「山廃」や「生もと造り」といったバリエーションが増えてきてます。
でも特別純米になると、どの蔵もオーソドックスな造りが多いです。
つまるとこ、特別純米が一番クセのない味で、香りもほどほど、そんな場合が多い!ということです。
以上、「特別だけど特別じゃない」という「夢だけど夢じゃなかった」(サツキ&メイ)の逆パターンを解説してみました。
日本酒を飲み始めた人に向けて、なるべく簡単に書いたつもりなんですが、余計にややこしくさせてたらゴメンナサイ(苦笑)
ネット上にある日本酒の情報って、当たり障りない情報になるので解りにくい気がします。
一つの蔵のラインナップを見た時に、こう考えて間違いないと思います。
- 特別純米酒 → 一番ノーマル
- 純米酒 → 特別より濃厚
- 純米吟醸 → 特別より高級
知らない蔵の酒を買う時は、特別純米から買うってのは賢い方法のように思います。
こっそり言いますが、純米吟醸が失敗してる蔵、逆に純米酒が失敗してる蔵など、その年によって出来、不出来があるのですが、特別純米はどの蔵も大きな失敗がないように思います。
なんでだろう?
さすがに、知り合いの蔵にも聞けないな(苦笑)
しかし、日本酒の種類ってややこしいですね。
日本酒の種類については、以前に解説してます。
こちらも、この記事と同じように、ややこしくしてるだけかもしれませんが(苦笑)
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