先日「日本酒でワイングラスはあかん!」みたいな記事を書いちゃいました。
けっこう知り合いの酒販店さんや飲食店さんから「いや、そうは言ってもけっこう人気よ」とか、「この銘柄をワイングラスで飲んでみてよ」というお言葉いただきました。
また「世界に日本酒を売るにはいいのでは?」という趣旨のお言葉もいただきました。
そうすると・・・ワタクシ、生粋の天邪鬼でして(苦笑)
もう一回、全力で反論してみます。そして全力でふざけます。(爆)
目次
ワインと日本酒の仁義なき戦い
時は2011年、虎ノ門にある総本部で月桂太郎は一人頭を抱えていた。
「あかん・・・もうどうやっても」
全国1754の直系組を統括する日本酒組。
シノギは減る一方。30年前に比べて1/3にまでなっていた。
そこへ組員の一人が駆け込んでくる。
「組長!」
「どうした?」
「ワイン組のやつら、寿司屋のシマに乗り込んで来やがりました!」
「なにぃ!」
日本料理には日本酒、そう思い込んでいた彼らには、ヨーロッパからの新興勢力「ワイン組」がまさかそこまで勢力を伸ばすとは、予想もできなかったのです。
組長「リベートで返り討ちにしたらぁ!こっちは1ケースに1本付けたろやないけぇ!」
「あきまへん!」
組長「なんでじゃい!」
「この間までの麒麟組、朝日組との抗争を忘れたんですか!もう原価割れしとります!」
組長「ちぃ、ほなら、こっちも奴らのシマ荒らしたるわ!フレンチとイタリアンにカチコミじゃあ!」
ーーーしかし、そう思った以上に取れません。
組長「なんでじゃあ!ワインは良くて、なんでワシ等はアカンのじゃ!」
「先方が言うには、やはり店の雰囲気に合わないと言う事で・・・」
ーーーそこへ現れたのが直参の利き酒師組、組長である。
利き酒師「兄弟、ワシにええ手がある。」
日本酒組「おお、これは利き酒師の。どんな手や?」
利き酒師「ワイングラスで日本酒を飲ますんや」
日本酒組「・・・なるほど!それなら洋食屋にも置けるな」
利き酒師「それだけやないで、兄弟。世界各地にあるんはワイングラスや。男山組のアメリカ話は聞いとるやろ。」
日本酒組「おお、えらい向こうで苦労してるらしいなぁ。」
利き酒師「ワイングラスなら、向こうの連中も飲みやすい。伝統や文化に縛られてたら、この先、世界で戦えんで。」
日本酒組「ほんまやな。ワシはサムライ・ロックの失敗で臆病になっとったんかもしれん。」
利き酒師「手始めに、ウチの連中に扱いを覚えさせたるわ。」
日本酒組「ほんまか兄弟!そしたら百人力や!よっしゃ!やつらの一番大事なもん取ったらぁ!」
ーーーこの動きに焦ったのはワイン組である。ワイン組は本家の相談役でもある「ソムリエ組、組長、田崎真也(仮名)に助力を求めた。
ワイン組「どうしたらええんじゃ?田崎の叔父貴ぃ!グラスぐるぐる回しとる場合や無いでぇ!」
田崎「放っておきなさい。」
ワイン組「ほんまですか?」
ソムリエ組の組員「おやっさん!てえへんです!」
田崎「バカヤロー!ちゃんとフランス語でレ・プレジデントと呼ばんかい!」
ワイン組「どうした!次はインド料理屋にでもカチコマれたか?しかしあそこはラッシーが手強いからのぅ」
ソムリエ組員「おお、これはワイン組の組長。違います。ウチになぜか日本酒の講演やら依頼が殺到してんでさぁ!」
田崎「・・・ふっ。思った通りや。」
ーーー所変わって虎ノ門の日本酒組事務所
組長「なんや兄弟!ワイングラス使いだしたら、急にソムリエ組が出しゃばってきおるぞ!」
利き酒師「・・・テイスティング言うたのが間違いじゃったのかも、しれん。」
組長「どういう事や?」
利き酒師「ワイングラス使うて、テイスティング。そうなると、カタギの人間にはソムリエが一番信頼できるのかもしれん。」
組長「そんなん今さら言うてどないすんねん!もう若者の間には流行っとんのやぞ!」
利き酒師「あんたんとこはまだええ。ウチのシノギは・・・半分以下や。」
組長「アホやな、自分で撒いた種や。まあウチが儲かればええけどな。」
ーーー組長は机の上の報告書に目を移す。
組長「なんやて?なんでこないに話題になっとんのに、消費量が落ちとんのや!」
ーーーあわてて若頭が部屋に入ってくる。
若頭「へい。ワイングラスで勧めてるんで、冷酒の需要は伸びてんですが、燗酒がその分、落ち込んだようで」
組長「なんでや?燗なら徳利、使えばええだけやろ。」
若頭「それが・・・うちの若いもんに聞いた話では、2つ持つのは面倒だそうで。」
組長「アホか。まあええわ、そんなら冷酒をもっと伸ばせばええやろ。」
若頭「それが・・・今の若いもんは一杯か二杯程度しか飲まんので。」
組長「ちっ、若えのにだらしがねえ。上の者はどうした?」
若頭「へい。ワイングラスに合わせて生原酒を中心にしたんですが、どうも年配のカタギには飲みにくいそうです。」
組長「やめだやめだ!もうワイングラスは、おしめえにする。」
若頭「ですが・・・もう無理です。」
組長「無理?どういうこった?」
若頭「国内の酒器は、スワロフスキー一家とリーデル一家の傘下になりやしたので。」
組長「なんてこった!このままじゃ外国勢に全部のシマ取られんぞ・・・せや!まだ海外がある。男山組から連絡入ってねえか?」
若頭「へい。向こうの組長と電話で話をしたんですが、ワイングラスで飲むならワインのほうが良いって言われたそうです。」
組長「・・・なっ。」
若頭「考えてみたら、そうですよね。俺も思うんですが、ワイングラスで飲んでると、無性にワイン飲みたくなるんですよね」
組長「てーめー!それでも日本男児か!」
若頭「何言ってんですか。組長が、これからは伝統や文化に縛れちゃいけねえって言ってたじゃねえですか。」
組長「くっ。」
ーーー「失礼しますよ」そう言って入ってきたのはソムリエ組の組長。
日本酒組長「てめえ田崎!何しにきやがった!」
田崎「いえね、ウチに依頼があまりに多いもんで、今度、ウチでも日本酒の資格を作ることにしたんで、その挨拶に。」
利き酒師「何ぃ?」
田崎「それでは、私はこの後、リーデル一家と”SAKEアワード”の打ち合わせがあるので。失礼。」
去っていく田崎。
日本酒組長「ワイングラス、テイスティング、気づけば外来語ばっかりになっちまった。肝心の酒は白ワインみたいな味ばかりに・・・終わったな。おめえがあの時、あんな事を言わなけりゃ」
利き酒師「ワシだって・・・ワシだって・・・女にモテたかったんじゃあ!」
若頭「では、俺もそろそろこのへんで。」
組長「おい、若頭、おめえどこ行くんだ?」
若頭「いえね、もう、ここの組に先は無さそうなんで、クラフトビール組に入れてもらうように頼んだんでさ。」
組長&利き酒師「ええええええ!」
言葉の持つイメージって、でかい。
以上、かなりふざけて書きました(笑)
悪者にしちゃいましたが、田崎さんって方は仁義も愛もあると思います。
言いたかったのは、言葉って気をつけて使わないと、立場が変わるよなって事です。
「ワイングラスで日本酒」って言った時点で、日本酒はワインより下です。
「日本酒のソムリエ・利き酒師」って言った時点で、利き酒師はソムリエより下です。
これ、利き酒師は「あ、テイスティングはワインですね。日本酒は利き酒なんで」って言い放ってたら、権威を守れたのに。
また、どうしても冷酒用の酒器がほしけりゃ、専用の物を使うべきだった。「冷酒グラスは、ワインを飲むときにも使えますよ。」って売り込みゃ、おもろい戦いになったのに。
またスパークリング・日本酒と言わずに泡酒。「泡酒?ああ、ワインで言うとスパークリング・ワインですね」って言えば、泡酒ってジャンルが作れたのに。
違うジャンルで例えると、もし、内田裕也に「あなたはロック界のカラヤンみたいですね」って褒めたら「クラシックとロックは違うんじゃいボケー!」ってキレないといけないわけです。
これを「へへへ、そうかなぁ。」って照れ笑いしちゃうと、ロックはクラシックより下になるわけです。
日本酒組合と利き酒師の協会は、ワイン界と手を組むべきでは無かった。と僕は思います。
海外進出はワイングラスでしないほうが良い
今、日本酒はどんどん海外に進出しようとしてますが、僕の考えでは、外国人に飲ませる時にワイングラスで飲ませるのは反対です。
理由は2つ。一つ、不利なケンカはしない。
わざわざ相手の土俵で戦う必要は無いと思います。ワイングラスで飲ませると、白ワインと戦わないといけなくなります。
おそらく、向こうの人は思うでしょう。「へー日本酒って、割りと飲めるじゃん」って。もうこの時点でワインより下です。
僕がもし、全世界に道場破りに出かけたとします。相手がフェンシングの場合、こっちはフェンシングの剣なんて使いません。竹刀でさっさと向こうの剣を折ります。
そもそも、日本酒は冷から燗まで飲めるという、世界でまれに見る強みがあるのですが、そこを使わない手は無い。
国内でも国外でも、ワイングラスで勧めるってのはワインのおこぼれ、二番手を取りに行く手法だと思います。
もう1つの理由。説得力がない。
僕がもし外人なら、日本酒を飲むなら日本文化にまみれて飲みたい。寿司を食って升かなんかで飲みたい。
ワイングラスで飲まして、話が広がります?
例えば升で飲ませると「これはマスマス繁盛と言って縁起がいいんですよ。」とか「この酒器は漆塗りで・・・」など、日本酒以外にも話が広がります。
「日本酒ってワイングラスで飲むと美味しいですよ」って説得力弱くない?
って!思い出したのは何十年も前の映画でメグ・ライアンの「恋人たちの予感」で相手役のビリー・クリスタルが升酒飲んでなかった?
また「アイアンマンⅠ」でロバート・ダウニーJrが飛行機の中で飲んでたのは、お猪口で燗酒、だったと思います。
つまり海外の人には、ワイングラスで日本酒って最終的には、ウケないと思います。
もうすでに日本酒ってイメージの中にお猪口や徳利は入ってて、そこをあえてワイングラスにする理由は無いかなと。
僕の友達のイタリア人も、お手製のぐい呑で飲んでます。「ワイングラスで飲まないの?」って聞いたら「へ?」って顔してました。まあ、そうですよね。向こうの人はワイングラスはワインを飲む物なので。
そもそも、日本酒以外で「他の酒器で飲ます」ってのを、自ら率先してやってるジャンルって見たこと無いです。
ウイスキーは「モルト・テイスティング・グラス」です。紹興酒ですら中国陶器で飲ませてんじゃん。
ある意味、ワイングラスでも美味しいって、なんて懐の深さだろう!って日本酒を讃えれるんですが、遠回りな気がするなー!僕は。
あと、ちょっと面倒なのは、生酒マニアの人が増えすぎ。(苦笑)
これ、どっちもどっちですが、生酒ばっか飲んでる人はそっちに引っ張られてるので、生酒ばっか勧めるんです。
「白ワインみたいだよね!」
「日本酒とは思えないよね!」
「フルーティーだよね!」
とか、お決まりのセリフが出てきます。
いいけど、ちょっと冷静になろうぜ。
俺も酒屋時代はそこを突破口にしようとしたんだ。
でも一般市民は、無理して日本酒じゃなくていいんだ。○○みたいな日本酒ってのは、○○そのものを飲んだほうが早いんじゃないか?フルーティー勝負しだしたら、缶チューハイに勝てるのか?向こうは原料フルーツやぞ?
ただ、彼らのほうが日本酒に貢献してるでしょう。
おい!燗酒派!「我関せず」と決め込んでたら、こんな状況になっちゃったぞ!(笑)
例えば「日本酒_ワイングラス」で検索すると、もう絶賛の嵐!。
かたよってんなー!と思います。
蔵の方と酒販店さんは、とりあえず小手先で流行に合わせといて、虎視眈々と地位向上を狙ってほしいと思いますっ!
その昔、石原裕次郎がブランデーグラスを持ってましたが、今ではギャグになってます。
日本酒でワイングラス!ってのも時が過ぎれば、ギャグになるかもしれません。逆に完全に定着するかも。
流行ってやつは過ぎてみないとワカンナイ!
まあ、そんな状況なんで、勝手に酒ブログ書いてる僕ぐらいは、逆を言いたいなと思います。
そんなわけで、もう一度、声を大にして
日本酒でワイングラスは、あかんと思うぞ!。