酒屋でワインを実際に売っていた僕から見ても、ワインはややこしいと思います。
それでも、ここさえ覚えれば!ワイン初心者の人でも、千円から2千円の安いワインでもワインが深く楽しめるのではないか?
「ワイン入門」、みたいな本は本屋に行くと、たくさん出ているのですが、はたしてこれは必要な情報なんだろうか?という疑問はかねてからあります。
それとは違う切り口で書いてやろうと思ってます。
さてさて、ではワイン初心者は、まず何を覚えて何を買えばいいか?なんですが・・・
とりあえず、今持ってるワインの知識は一度全部捨てて下さい!
と、言いたい。
目次
【あてにならない巷のワイン情報】
ワインの話って、なんとなく聞いた事があると思います。よくある話だと・・・
- 肉には赤ワイン、魚には白ワインが合う
- ワインは寝かしたほうが旨い
- ワインは冷やしすぎると良くない
- チリの赤ワインは安くて旨い
- オーガニックワインは二日酔いにならない
などなどアレコレ・・・
うんこれ、全部、間違いです!(笑)
- 肉に合う白ワインもあるし、魚に合う赤ワインもあります。
- 寝かしたほうが旨いワインもあれば、若い方が旨いワインもあります。
- 冷やして旨いワインもあれば、常温のほうが旨いワインもあります。
- 旨いチリワインもあれば、不味いチリワインもあります。
- オーガニックワインは二日酔いにならない?気のせいです。(笑)
結局、何事もケース・バイ・ケースであり、付け焼刃的な情報は持ってるほうが損します。
世の中の情報は一回全部捨てて、自分が飲んでみた経験だけで判断するのが良いです。
まあ、あれだ、色々耳にするワインの話なんて、「東京には美人が多い!」みたいな、その程度の信憑性だと思っててOKです。
【ワインの産地や葡萄品種なんか覚えなくてOK】
ワインの本や話を見聞きすると、必ず産地や葡萄品種のことが目に付くと思います。
" ロマネコンティの感想
フランスはブルゴーニュ地方の名ワインで、ピノノワール種による芳醇な香りと濃厚な味わいが・・・うんぬんかんぬん "
みたいなね!
こういう薀蓄(ウンチク)はソムリエでも目指さない限り、覚える必要は無し!です。
ブルゴーニュ地方のワインが全て旨いのなら、選ぶ時の基準に使えます。ですが、先ほどと同じでブルゴーニュのワインにも旨い物と不味い物があります。味の系統は似てきますけどね。
【へたに覚えると損するワインのウンチク】
周りでワイン通な人や、ワインが好きな人っています?
そういう人の中には、こだわりが強い人、いますよね。
「俺はフランスのボルドーワインしか飲まないぜ!」
「3千円以下のワインなんて飲むだけ無駄」
みたいな感じの人、たまにいます。
これ、寿司屋に例えると、どういう状況か解りやすいかも。
ええ、寿司屋です。
上司に誘われて寿司屋に行ったとします。その上司はお寿司大好き。んで薀蓄を言うわけですわ。
「寿司ってのは、江戸前よ。やっぱり銀座が一番だね。まずはコハダ。光り物を頼めば店の実力が解るってもんよ。
大トロ?あんなもんは素人の食いもんよ。ツウは赤味だね」
みたいな事を言ってる上司がいたとしたら・・・
ね、すんごい損してるでしょ(笑)
銀座じゃなくても旨い店はいっぱいあるのに、その日のコハダは良くないかもしれないのに、滅多に出会えない大トロの逸品があるかもしれないのに・・・
これと同じように、ワインもこだわると、新たな出会いが無くなっていきます。
聞いた事が無い国のワインがすごい旨かったり(最近、ブルガリアワインが旨かったです)
安いワインで感動したり(最近、880円のワインで感動しました)
または逆に失敗したり(7万したシャトー・ラトゥールいまいちだった)
そんなわけで、ワインってな結局、飲んでみないと解らないので、知識を身に付ける必要は無いです!
では!ワイン初心者は何も覚えなくて良いのか?
否。否です。
ただただ、これだけ覚えて下さい!
ワインはテロワールが全て
おお、ワケ解らん言葉が出てきた、と思うかもしれまんせんが、これが一番重要なんです!
「テロワール」、スペル表記すると「terroir」なのかな。多分(笑)
これ、日本語で当てはまる言葉ってないんです。
やや近いのが「滋味」、「個性」、「風土」
その土地の気候や風土がワインに与える影響って感じでしょうか。
これが色濃く出ているワインが良いワインであり、ここにワインの面白さは全て詰まってます。
ワインの旨い、不味いってどう判断されてます?
香りが良い?
味が濃い?
まあ、それも旨い理由の一旦ではあるんですが、テロワールってものを解ってないと、薄っぺらい評価になっちゃいます。
そして、テロワールの豊かなワインが良いワインって事なんですが、1500円ぐらいのワインでもテロワール豊かなワインってのは、あります。
テロワールってのが、イメージしにくいと思うので、無理やり例えると、オレンジジュースがあったとします。
100%のオレンジジュース、一度は飲んだ事ありますよね。
このオレンジジュースに、個性とか、滋味はあるでしょうか?
アホか、と言われそうですか、そうですね。あるワケないですよねー。
では、愛媛でも和歌山でもいんですが、産直のミカン、これはどうでしょう?
個性ありますよね!
ちなみに、愛媛のミカンだと、海沿いの畑で作られるミカンと、山奥で作られるミカンは全然、特徴が違います。
こういう畑や気候の特徴を、ワインは色濃く反映してて生産者も「いかにテロワールを出すか?!」という事に努力を重ねてるワケですわ。
ワインはよく飲むけど、そんなの感じた事ないなー。
って人は、多分、スーパーかコンビニで2千円以下のワインを買ってたりしませんか?
安いワインってのは、大量生産で作られているので、色んな畑のブドウが混ざってます。なので、テロワールは無いんです。
ああ、日本の某ビールメーカーがご当地ビールってたまにやってますよね。どことは言いませんが・・・
あれはテロワールなのか?というと、テロワールでは無いです(笑)
味が違うのは、主に工場で使ってる水が違うからです。
ワインのテロワールってのは、原料のブドウに影響を与えてる畑の土だったり、醸造所がある場所の気候だったり、そんな微妙なニュアンスの事です。
そのため、小規模生産のワインがテロワール豊かなワインになります。
テロワールの掴むために、おすすめの飲み比べ3本
実際の銘柄を出して説明してみます。
ワインの個性を掴む時、やはり「飲み比べ」するのが一番解りやすいです。
なので、この3本を例に出してみます。
1:カステルカンブラス
フランスの「カステル社」ってとこが出してるフランス・ワイン。
安っすい。600円ぐらいで買えます。
フランス国内の色んなブドウが入ってます。旨いですが、テロワールはもちろん無いです。
でも、値段の割りに濃くて旨いと思います。コッテリした赤ワイン。
2:バロン・ド・レスタック
次にこの「バロンドレスタック」というワインを飲みます。
作ってるのは同じ「カステル社」。
でも、先ほどが「フランス・ワイン」だったのに、こちらは「ボルドー・ワイン」。
お値段上がって1200円ぐらい。
ボルドーとは地名です。ボルドーで作られたブドウを集めて作ったワインです。
飲むと「あら?格が上がった?」って感じが解ると思います。
コッテリした中に、一本筋が通ってる、みたいな感じです。
でも残念!テロワールと言えるほどの個性はありません。
3:シャトー・モンターニュ
3本目にこの「シャトー・モンターニュ」。
2本目と同じくボルドーワインで値段も同じぐらいですが、こちらはさらに小規模生産。
ブドウ畑からワイン醸造まで、一環して一つの会社が作ってます。
こいつになると、いきなり「土のニュアンス」みたいなのが現れます。
だんぜん個性的です。
飲み込んだ後、舌の上に残る風味を感じてみて下さい。
なんか、田舎の田園風景が見えて来ません?
ああ!これこそテロワール!
全部、赤ワインで書きましたが、全く同じ銘柄で白ワインでもできます。
- カステルカンブラス 白
- バロン・ド・レスタック 白
- シャトー・モンターニュ 白
これでも、同じように違いが解ると思います。
「カステルカンブラス」と「バロンドレスタック」は輸入元がサントリーで、スーパーにも出回ってますんで、すぐ手に入ると思います。
シャトーモンターニュは他のでもいいです。その時はボルドーの赤ワインで「シャトー○○」と名前が付いたワインを選んで下さい。
この「シャトー○○」のシャトー、って付いてるワインは、ブドウの生産からワイン醸造、ビン詰めまでを同じ会社がやってるって意味です。
ワイン初心者におすすめするワインの選び方
さて、ここまで来ると、なんとなく選び方も見えてくるんじゃないでしょうか?
ワイン初心者がワインを選ぶ場合、以下のことに注意すればOKです。
- 産地やブドウ品種といった情報は意識しない
- 小規模生産のワインを狙う
- 状態の良いワイン屋で買う
これだけで充分です。
小規模生産のワインっていうのが、ラベルからは解らないと思います。
ワインショップのPOPやカタログを参考にするか、または通販で買う場合は生産者の情報をググれば見えてきます。
あ、状態の事について説明してなかった。補足します。
【状態の良いワインってなんだ?】
ワインは保存に適した温度が12度から18度ぐらい。
暑くもなく、寒くもない室温がベターです。
そして日光もダメです。蛍光灯もなるべく避けたい。
そうなると、一般的にスーパーやデパートで売られているワインは、ほぼ全て状態が悪いって話になるんです。
状態が悪いと、どうなるか?っていうと風味が飛びます。風味?そう、テロワールです。
(またテロワールかい?とは思わないで~笑)
上記画像のホコリをかぶったワイン、一見まずそうですが、実は状態はいいんですね。ワイン貯蔵庫で寝かされている状態です。
なので、買う時は、ワインの管理に気を使ってそうなショップで買ったほうが良いです。
【最後に買った後の楽しみ方】
さてさて、ここまでワインの入門編、初心者へのワインの能書きを書いたわけですが、
「産地とか知識は要らねえ!」
と言いましたが、買った後の楽しみ方として、知識があると、ちょっと楽しいです。
ちょっとスポーツ選手に例えてみます。
ええ。サッカー選手の本田圭介ですね。(笑)
まあ、言動が一癖あるんで、好き嫌いは分かれると思いますが。
この本田選手、生まれは大阪です。
そんな裕福な家でもなく、家は普通の木造二階建て。
小学校2年生の時、両親の離婚が原因で岡山に一度引っ越してます。
こんな生い立ちを知ってると、ちょっと応援する方もより面白いですよね。
ワインも同じ。
これ、「コウシーニョ・マクル・フィニス・テラ」というワインですが
全然、有名でもなんでもないワインです。
チリのワインなんで、歴史が浅いかと思いきや!ワイナリー設立は1856年。
ちなみに、日本のサントリーが設立されたのが1899年です。
1932年にフランスからカベルネの苗木を持ち帰り、その歴史の積み重ねが、このワイン。
なんではるばる、フランスからブドウの木を取り寄せたのか?
なんでカベルネなのか?
そんな事を調べながら飲むと・・・より旨いです。
名前の「フィニス・テラ」とは「最果ての地」。
なんか、意味ありげですよね!(笑)
そんなわけで、買うときに知識は必要ではないのですが、
飲む時に知識があると、楽しみが増えます。
って事を最後に付け加えておきます。
まあ、ほんとに、値段とか情報とか、気にせず、10本ぐらい試してみて下さい。
きっと、1、2本は感動や驚きがあるんじゃないか?
そう、願ってやまない、私の勝手なおすすめ話でした(笑)
なにか参考になれば、これ幸いです。